『MODE MOOD MODE』全曲レビュー 前編

 めちゃくちゃ 早いもので、UNISON SQUARE GARDENが7thアルバム『MODE MOOD MODE』をリリースしてから3週間が経ちました。

 

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 そんな訳で、このアルバムの全曲レビューをだらだらと書いてみました。レビューというほど大層なものでもないですが・・・。そして書いてみたはいいものの、めちゃくちゃに長くなったので、6曲ずつ2回に分けて投稿します。文章長くなってしまうの本当にやめたい。てことで、分量少なめのアルバム通した全体の感想も別で書いておりますのでそちらもまた適当に投下しますね。ではでは、1曲目からいきまーす。

 

1.『Own Civilization (nano-mile met)』

 前作『Dr.Izzy』の『エアリアルエイリアン』のような立ち位置の、「え?何これ?」枠な楽曲でアルバムが開幕。冒頭で「7枚目っ!」と聞こえて頭抱えて笑いましたが、このタイプのギミックもお馴染みになってきましたね。この曲、これまでのユニゾンのイメージからかけ離れまくっているグランジ感満載のサウンドに対する驚きもさることながら、それをまるで本物っぽくかつユニゾンらしさも残して歌いこなしてしまう斎藤の歌にまず驚きました。特にAメロは、これまで曲で出こなかったタイプの歌い方のレパートリーだったので「こんな歌い方もできちゃうのか・・・」とただただ感服。

 歌詞については、『シュガーソングとビターステップ』以降、徐々に世間に受け入れられてきた状況に対するカウンターというか、観客と馴れ合いのコミュニケーションはしないんだ、自分たちが築いてきた『Own Civilization』と今の状況にズレが生じていないか都度確かめながらやっていくんだみたいなニュアンスを感じました。サウンドこそ変化球ですが、言っていることはいつものユニゾンで「あ、変わってないな」とある意味安心できる楽曲でもありました。

 

2.『Dizzy Trickster

 1曲目とは対照的にサウンドから「これぞユニゾン!」な楽曲。涙腺を刺激されるメロディと、ちょっとロマンチックでありながら、つかず離れずの適度な距離感を保った歌詞。聴く人それぞれに「これぞユニゾン!」っていうタイプの曲があると思うのですが、この曲に関してはもう大方の人が諸手を挙げて「これぞユニゾン!」と言えるタイプの曲じゃないでしょうか。個人的にはAメロの歌詞(特に1番)とメロディが好みど真ん中で、聴くたびに天を仰いでガッツポーズです。

 そんなこの曲を聴いて真っ先に感じたのが、1曲の中で視点がコロコロ変わっているなということです。具体的にいうと、「ロック大好き少年の田淵智也(観客側)」と「UNISON SQUARE GARDEN田淵智也(演者側)」が1曲の中で行ったりきたりしているように思えるのです。例えば、1番Aメロの<ああ上手に準備されたユートピアに浸って帰り道につけば 悲しいは微塵すら無いのだけど 無いのだけど依然体制異常なしだなんて わがままが芽生えたんだ>は、演出過多なライブを観客側の視点から捉えている表現に見えます。そこからBメロ、サビの前半までは観客視点の歌詞が続きます。しかし、1番サビの後半あたりから様子が変わります。具体的にいうと<まだわかんない言語化不能の断片たちを連れていこうか 席はちゃんと空けておくから 間に合わないなんてないんだよ この高揚感は誰にも奪えない>のあたりから、そこまでの歌詞で描かれてきた「Dizzy Trickster」に影響を受けたUNISON SQUARE GARDEN田淵智也の視点が入ってくるのです。そこから2番の終わりまでは演者側視点の歌詞が続きます。そして、Cメロ以降は視点がごちゃ混ぜになった歌詞になっていきます。観客として「Dizzy Trickster」に影響を受け、端から端までその血が流れているし、その世界に浸っていたいし追いかけて続けたいけれど、演者としてそれだけでは成立しない。演者として独自性を出しながら一人で走っていかなければならない、そんなことを歌っているのかなと思います。

 順を追って整理すると、1番が「Dizzy Trickster」との出会い、1番後半~2番が、「Dizzy Trickster」に影響を受けたUNISON SQUARE GARDEN田淵智也の演者としてのお話、Cメロ以降は演者になった今もなお観客として「Dizzy Trickster」に影響をうけつつも、自分たちの道を進んでいくお話。と、僕はそんな風に解釈しました。歪な解釈かもしれませんが、責任を問われることも無いようなので笑。

 話が少しそれますが、この曲の1番Bメロで<差し出された手は掴まなかった>という歌詞が出てきます。また、1曲目の『Own Civilization』でも<差し出された手は噛み千切るけど>という歌詞が出てきます。この2つの歌詞、一見同じようなことを言っているように見えますが、ここまで書いてきたことを踏まえると視点が逆っぽいなと分かると思います。前者は観客側の視点、後者は演者側の視点ですね。だからなんだという感じですが、ユニゾンが後者のようなスタンスになったのは、前者のようなスタンスを観客としての田淵が持っているからなのかなと思います。

 

3.『オーケストラを観にいこう』

 オーケストラサウンドがガッツリ入っているハイパー甘々ポップな3曲目。田淵曰く、このアルバムの軸となる曲2曲のうちの1曲とのこと。今回のアルバムの意図は、無骨なサウンドな楽曲が多かった前作『Dr.Izzy』で「やっぱユニゾンは変わんないよね」と安心したファンに揺さぶりをかけることであり、その意味で、3曲目というメインの位置にバキバキのオーケストラサウンドが入ったこの曲が置かれているのは超納得。1番Aメロなんかはギターの音だけで真夏の青空の映像が頭に浮かんでくるのでそれはそれで秀逸なのだけど、サビ以降でオーケストラサウンドが入ってくることによって、この歌で描かれている物語の甘さがよりくっきり鮮明に表現されているかなと思います。

 この曲、おそらくラブソングだと思うのですが、ユニゾンの作るラブソングを聴くたびに感じることをこの曲でも感じました。それは、恋愛の明るくて綺麗な部分のみに焦点が当てられているということで、それ故に、ラブソング特有の「人間臭さ」みたいなものがほとんど無いのです。世間一般的なラブソングはおそらく「人間臭さ」に焦点が当たるほどリスナーの共感を得やすいため、ユニゾンのラブソングを聴いて「共感した!」という感想を持つ人は多くないのかなと思います。しかしその代わりに、少女漫画を読んでいる時のような独特の高鳴りみたいなものがあったりして、その温度感が好きな人にとってユニゾンのラブソングはドストライクなのかなと思います。同じようなアプローチでラブソングを書いているアーティストもあまりいないような気がするので。この曲で言うと、2番Aメロの<何気なく差し出され何気なく取ったチューインガムのフレーバー どうしてかな 書いてある果物とは違う甘い香りだけが横切った>の部分が1番象徴的にその温度感を表しているかなと思いました。現実にありそうでほとんど無い、絶妙に少女漫画チックな歌詞だなと思います。個人的にはサウンド、歌詞の雰囲気ともにめちゃくちゃ好きなタイプの楽曲です。

 

4.『fake town baby

 シングル4選手の先陣を切って登場したのが『fake town baby』。はっきり言って全くの想定外で、7曲目前後に入ると勝手に思っていました。そんな思い込みもあり、1周目はこの位置にこの曲がきている事実に全く納得感が無かったのですが、聴く回数を重ねる度に、『fake town baby』はこの位置しかないと思うようになっています。納得感が無かった理由は2つ。1つは過去のアルバムが1~3曲目である種完結していて、4曲目からアルバムの流れが変わる仕様になっていたこと。もう1つが、『fake town baby』のようなロック色強めの曲はこれまで後半に収録されていたことです。しかし、3曲目のポップ色がかなり強いこと、1~3曲目に4番打者的な強さを持った曲が無かったことを考えると、ここで『fake town baby』を持ってきて、これまでとは違う、1~4曲目という塊で序盤を完結させるのが最適解なのかなと腑に落ちました。

 曲についてはこれまであったロック色強めな曲(『セレナーデが止まらない』、『パンデミックサドンデス』的な曲)と近いのですが、それらの曲には無かったキラキラ感があったり展開がぶっ飛んでたり、英詞が混ざってみたりと、シングルならではのおもちゃ箱ひっくり返したようなカオスな遊びがあって、これまでの同じタイプの曲とは完全に一線画してるかなぁと思います。この曲、色々カオスなんですが、最終的にはロックなようでかなりポップなところに着地している気がするので色んな場面で演奏されていく曲になるんだろうなぁと今から楽しみです。

 

5.『静謐甘美秋暮叙情』

 疾走感満載な流れも一旦ここで一区切り。このアルバムをまず1周したときに1番衝撃を受けて耳に残った曲がこれです。シティポップとかAORとか、そういったジャンルの大人な雰囲気を感じる曲ですね。サビの裏メロで鳴ってるギターの音とかギターソロの音とか、ただただ大好きです。

 この曲、そんな大人びたオシャレサウンドも魅力なのですが、歌詞もまた最高に魅力的なのです。全体通してすきなのですが、個人的に特にぶっ刺さったのが<frame out 両手にあった景色が零れてしまう程なく溶け出す淡い眩暈>という1番サビの歌詞です。一見意味不明なのに深読みしようとすればいくらでも出来て、なおかつ声に出したくなる気持ちよさもあって、1番好きなタイプの歌詞です。個人的にこの歌詞は「今まで当たり前のようにあったものが無くなったことに気づいて涙する様子」と解釈しました。もし仮にそうだとしたら、その状況をこの言葉に変換できる才能ってどこで身につくんだろうと真剣に羨ましい気持ちでいっぱいになります。そしてそしてこの一節、斎藤の歌の表現力が爆発しています。特に「眩暈」の歌い方、視界がぼやけていくさまがものすごく伝わってきて、歌で表現できることってたくさんあるんだなあと、ここでもただただ感服でした。ライブで聴くのがとにかく楽しみな1曲ですね。ギターとかどうするんだろうか・・・。

 完全に余談ですが、この曲が好きな人は是非下にリンク貼った曲聴いてみてください、もしかしてもしかすると、ドハマりかもです。

 

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 6.『Silent Libre Mirage

 前曲からほぼシームレスで始まるシングル4選手の2人目。完全に2曲目にくると思ってましたがこの曲もこの位置で大正解ですね、悔しいですが。重くもなければ軽くもない、アルバムの中のお口直し的ポジションとして最適な曲だなあと思います。シングルなだけあって歌詞は結構自分たちのスタンスを強めに宣言してますが、強すぎないちょうど良い塩梅だなあと。こういう爽やか美メロで言葉がスルスルと流れていくようなタイプ曲、ユニゾンの中でもかなり大好物なので、アルバムで初聴きだったらおそらく1番好きになっていた可能性ある曲です。やっぱりシングル曲とアルバム曲は聴いてきた回数もハードルの高さも違うし、どうしても同じ土俵で比べるのが難しいなあと思いますね、比べる必要は別にないと言われればそれまでですが。ところで2番のあそこの歌詞は誤植ですかね?あの漢字をあえて使ってるの、めちゃ好きだったんだけどなあ。

 

 てことで、以上前半6曲の前曲レビューでした!後半6曲は近いうちにまた投稿しまーす。

UNISON SQUARE GARDEN TOUR 2017-2018「One roll, One romance」@幕張メッセ国際展示場1-3ホール 

 2018年1月28日、「One roll, One romance」のツアー千秋楽が千葉県の幕張メッセ国際展示場1-3ホールで行われた。UNISON SQUARE GARDENにとっては過去最大規模のワンマンライブである。

 

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 バンドの舵取りである田淵(Ba./Cho.)は、自身のブログやインタビュー各所で幾度となく「大きい会場ではやりたくない」と発言していた。その真意はおそらく2つあって、1つは「遠くへ行ってしまった」と思うファンが出てきてしまうこと、もう1つは目立つことで今までのようなある種やりたい放題で自由な活動に支障が出ることであろう。しかし、そうばかりも言っていられないくらい、キャパ2~3,000の会場でのライブを彼らの体力がある限りで切ったとしても追いつかないくらい、彼らのライブに足を運びたいと思う人は増えたのだ。その結果に対して彼らが出した一つの答えが、今回の千葉公演の開催だったのだろう。自分たちの信念よりも「観たい人に機会を与える」方を選んだという訳だ。自分自身、ユニゾンを大きな会場で観ることに対する抵抗はあまり無かったのだが(幕張埋まるの?という不安はあったが)、やはりユニゾンがこれまで貫いてきた信念からずれる今回の公演に違和感や不安感を覚えるファンがいるのも同時に理解していた。だからこそ、「大きな会場で行うライブ」ということ対して、彼らがどういう答えを出すのかという不安を抱えながら会場へ向かった。結論から言えば、ただただ杞憂だった。会場の大きさこそ彼らの方針からずれてはいたが、アクト自体は何一つ変わらない、彼らの本質は何一つ揺らぐことないライブだった。

 

 開演時間から10分程度過ぎたタイミングで、会場の照明が落とされ、ものすごい歓声が起きた。武道館公演のときの歓声も震えるくらいだったが、今回はそのとき以上に観客の期待感が爆発していた歓声だった。彼らのライブを楽しみにしている人が自分以外にこんなにもたくさんいるのだなと肌で感じ、まだ始まってもいないのに既に感極まっている自分に少し笑ってしまった。

 

 いつも通り、イズミカワソワの『絵の具』と共に3人がステージに姿をあらわした。そのとき、歓声とともに、失笑や苦笑のニュアンスを含んだどよめきが起こった。一瞬何が起こったのか分からなかったのだが、会場の上の方をよく観ると、控えめな大きさのLEDディスプレイが設置されていた。これまで、武道館公演を含め、ワンマンライブでは一度もディスプレイを設置してこなかった彼らだが、このサイズの会場になると後ろの方の観客への配慮として設置したのであろう。この演出で笑いが起こったのが、このバンドの歴史を象徴的に示していたと思う。とはいっても、それ以外の装飾等は一切無し。大げさではなく、250人規模のライブハウスと全く同じ、シンプルという言葉以外では形容出来ないような、バンドの地力がむき出しになるステージセットで、彼らは2万人の前に立ったのだ。

 

 そんなどよめきも止み、1曲目に演奏されたのが『サンポサキマイライフ』だ。イントロの掛け声で、会場の熱気は一気に高まった。この曲で始まった瞬間、このツアーのセットリストは絶対に攻めたものになると確信した。なぜなら、直近数年間を振り返ったとき、重要であろうタイミングでしかこの曲は演奏されてこなかったからだ。しかも1曲目から演奏されたとなると期待はうなぎ上りである。実際は期待のはるか上を高々と飛んでいくのだが。そのまま『徹頭徹尾夜な夜なドライブ』、『kid, I like quartet』と、これまでのツアーではラストを飾っていたような強い楽曲たちが序盤から連続投下され、3曲目が終わる頃には幕張メッセはすっかりライブハウスと化していた。

 

 「すげえ・・・人間ってすげえ・・・。」会場を見渡しながら、テーマパークに初めて来た子どもかよと思わず突っ込みたくなるような顔で斎藤(Vo./Gt.)そう漏らした。「One roll, One romanceツアー、今日が最終日です!僕たちもめちゃくちゃ楽しみにしてきたので、皆さんも自由に楽しんでいってください、よろしく!!」と、MCもそこそこに、鈴木(Dr./Cho.)の流れるようなドラムから『MR.アンディ』へ。会場左右端の天井に設置されたミラーボールがキラキラと光り幻想的だった。周囲を見渡すとそれぞれがそれぞれの動き方で楽しそうに踊っていた。しかし、本当に大箱がよく似合う曲である。多幸感でいえば、この曲がこの日最高の瞬間だったかもしれない。斎藤がエフェクターを踏み忘れてギターの音が出ない瞬間もあったが、普段絶対に隙を見せない斎藤でも緊張することがあるのだなと、人間らしい部分を垣間見ることが出来てむしろ拝んだ。

 

 次に演奏された『シューゲイザースピーカー』だ。<どんなヒットソングでも 救えない命があること いい加減気づいてよ ねえ だから音楽は今日も息をするのだろう>と強く高らかに歌い上げたが、歌唱力を急激に上げている今の斎藤がこの詞を歌ったとき、その説得力はとにかくケタ違いだった。この曲は今後もユニゾンの大事な武器になる気がしている。そのままノンストップで『リニアブルーを聴きながら』、『fake town baby』と、立て続けにシングル曲が演奏された。『fake town baby』は音源も凄いのだが、ライブで更に力を発揮する曲だなと感じた。一体全体何がとうなってどうやって弾いているのかがあまりに謎過ぎて、凄すぎるものを目の当たりにすると人間は何故か笑ってしまうという貴重な体験であった。

 

 その後、一呼吸置いて『クロスハート1号線(advantage in a long time)』、『flat song』とスローなテンポの楽曲が演奏された。2曲とも大好きな曲なので、次に演奏されるのはいつなのだろうかと考えると変な涙が出そうであったが、噛み締めるように聴き入った。先ほども書いたが、斎藤の歌唱力がえげつないことになってきているので、こういったスローテンポな楽曲たちの魅力が過去曲を含めて段違いになっている。この何曲か後演奏される『僕らのその先』なんかが最たる例だ。正直に言うと、『僕らのその先』はリリース当時からそこまで刺さっていなかったのだが、このツアーで聴いて大好きな曲になった。そんな手のひら返しがいともあっさり起きてしまうくらい、斎藤の歌のレベルは上がっていると感じた。

 

 9曲の演奏が終わり、ここでようやく少し長めのMCが挟まれた。内容は最近ラジオ等で連発されているスプラトゥーンでしょうもなかった(褒め言葉)ので割愛。そんなしょうもないMCの後、「シングルツアーなので、セットリストにも幅を持たせられるんですよ。なので、次は普段あんまりやらない曲を披露します」。そう言って演奏されたのがなんと『ノンフィクションコンパス』だ。『ノンフィクションコンパス』だ。この曲は、8枚目のシングルである『桜のあと(all quartets lead to the?)』の2曲目にカップリングとして収録されているのだが、何故カップリングに入れてしまったのかと彼らを恨むくらい、とにかく良い曲なのである。そして、この曲は、『桜のあと(all quartets lead to the?)』のリリースツアー以来、約3年以上もの間演奏されていなかった、待ちわびていたのだ。好きすぎるが故に記憶がほとんど無いのが悲しいが、この曲が鳴っている約5分間、自分の中では間違いなくあの会場が世界の真ん中だったし、それくらいこの曲は僕の心の真ん中を打ち抜いているのだ。  

 

 どうでもいい話に字数を割いてしまったが、その『ノンフィクションコンパス』からシームレスに『メカトル時空探検隊』、『パンデミックサドンデス』と全く違うタイプの曲が演奏され、使い古された言葉ではあるが、まるで大きなジェットコースターに乗っているかのようなスリリングで爽快な気分だった。

 

 少しの間が空けられ、ユニゾンのワンマンライブではもはや恒例となっているセッションが披露された。個人的にはこれまで披露されてきたものの中で1,2を争うくらい好きなセッションなのだが、とにかくポップなのだ。誤解を恐れずにいうのであれば、ディズニーランドのパレードかのようなポップで開けていて、人懐っこいメロディだ。そのセッションの間には、3人それぞれのソロパートも用意されていたのだが、中でも鈴木のドラムソロは毎度のことながら圧巻だった。これはドラムソロ以外にも言えることなのだが、鈴木のドラムはライブを見る度にどんどん魅力的になっていると思う。ドラム自体に詳しくないためどう上手くなったかの説明が難しいのだが、とにかく手数が増えてバカテクになっている。しかし、それが演者のエゴではなく、ちゃんと観客に寄り添った、見た人に元気を与えるものになっているのが今の鈴木の強さなのだろう。ある時まで、ユニゾンの魅力は「田淵の作るキャッチーな楽曲」と「斎藤の歌声」と言われ、鈴木のドラミングに焦点が当てられることは少なかった。言ってしまえば相当歪な三角形だったのだ。しかし、今となっては鈴木のドラミングに対する賞賛の声を見かける場が圧倒的に増えた気がする。田淵の作る曲だってどんどんクオリティが上がっているし、斎藤の歌だって上で書いたとおり物凄いスピードで上手くなっているけれど、それを超えるスピードで鈴木のドラムはどんどん魅力的になっていると思う。今やユニゾンは歪さのない綺麗で大きな正三角形のように見える。

 

 三人のソロタイムも終わり、これでもかというほどテンポを上げて3人の演奏力を見せ付けまくったとことでセッションも終了。「もうちょっとやります!」という斎藤の宣言から次に繰り出されたのが『Silent Libre Mirage』だ。ここから最後までの流れは完璧としか言いようが無かった。『Silent Libre Mirage』はライブになると音源とはまた違った魅力が発揮されるなと思う。ライブで聴けば聴くほど音源もまた好きになり、音源を聴けば聴くほどまたライブでも観たくなるような曲だ。

 

 そこから今ツアーのタイトルにもなっている『10% roll, 10% romance』へ。この曲がリリースされたとき、個人的には『桜のあと(all quartets lead to the?)』の後釜を担えるような華のある曲がようやく出てきたかもしれないと思ったのだが、その予感はおそらく的中していると思う。会場の盛り上がり方、高揚感みたいなエネルギーがやっぱり他の曲と比べても段違いだ。リリース当時はメンバーですら心配していた演奏も、今となっては音源以上の意味不明なテンポで演奏しているし、最後の<有史以来 僕だけで十分だからさ>というフレーズも斎藤は音源以上に伸ばして歌っちゃってるし、もうこの人たち本当に追いつけないところまで来ちゃったなぁなんて思っていたら、そのまま休みなしに『誰かが忘れているかもしれない僕らに大事な001のこと』へ。「え、この曲大ヒットシングルでしたっけ・・・??」と思わず笑ってしまうくらいの盛り上がりだ。実はカップリング曲なのだけれども。この曲は田淵自身がとても大事にしている曲で、10周年記念アルバムに入っちゃったり、カップリングとは思えない明らかに重要なタイミングで披露されたりしてきた。そんなことを繰り返しているうちに、いつしかファンの中でも大事な曲になっていったのだろう、正に田淵の術中というところだが、めちゃ良い曲なので仕方ない。この曲の2番のサビに<INGで少しずつ 少しずつ やればいいんです>という歌詞があるのだが、まさにこれまでのユニゾンの軌跡を表していると感じた。決して爆発的にファンを増やしてきたバンドではないが、結成から15年弱をかけ、少しずつでも確実にファンを増やしてきた結果、2万人もの観客を集めることができるバンドになったのだ。アウトロでは短いが多幸間溢れるセッションが繰り広げられ、この日最高潮に感慨にふけっていると、今やロックファンのアンセムとなったあの曲のイントロへ突入、『シュガーソングとビターステップ』だ。派手な位置ではないものの、会場の熱が頂点に達するこのタイミングにこの曲を持ってくるあたり、あのセトリおじさんには感服だ。2万人の観客がこの曲で踊っている姿を見て、やっぱり彼らをここまで連れて来たのはこの曲なんだなぁと思った。売れるのが良いことか悪いことかはいろんな考え方があるけれども、彼らの音楽がこれだけの人に届いていることは喜んで良いことのような気がした。その後、「千葉最高に楽しかったです!ラスト!」という言葉から2ndアルバム『JET CO.』のラストに収録されている初期の大名曲『23:25』が演奏された。<帰ろう世界へ>というフレーズが、ライブが特別な場所であることを逆説的に説いているように感じられ、ラストにピッタリな楽曲だ。そんな『23:25』とともに、本編は大団円で終了した。

 

 本編終了後、会場からのアンコールを求める大きなクラップに応えて再び姿を現した3人。「いつも通りのライブをする。」という事前の宣言の通り、最後まで田淵と鈴木は一切喋らなかったが、2人の思いは全て斎藤が観客に分かりやすく伝えてくれているのだろう。アンコールのMCでも、幕張メッセという大きな会場でやることになった経緯、大きい会場でやってもこれまで通りいい曲を作って全国をまわり、ファンと顔を合わせて良いライブをし続けていくサイクルは決して変わらないことを、何気ない口調だけれども丁寧に説明してくれた。

 

 そんな胸が熱くなるMCの後、『Invisible Sensation』が演奏された。個人的に、良いMCの直後というのはそのライブで1番華のある位置だと思っているのだが、その位置にこの曲が来たのが本当に嬉しかった。冒頭の<高らかに 空気空気 両手に掴んで>の歌声が、澄み切っていながらも強いパワーに溢れていて、会場全体が息を飲む雰囲気を感じた。

 

 曲が終わり、2万人規模の会場が一瞬完全に静まり返った。その静寂を切り開くように始まったのが『RUNNERS HIGH REPRISE』だ。この曲は、田淵が敬愛してやまない『the pillows』に対するリスペクトが詰まった曲だ。<確かめては 今もどうにかやっているよ 転んでもさ 明日もどうにかやっていくよ>、<鼓動はちゃんと聞こえたから同じ様に響かせて今日まで来た>と、『the pillows』の姿を一つの羅針盤として、苦難がありながらもここまで歩んできたのだなということが伝わってきて笑顔にならずにいられなかった。そして、斎藤の「またね!」という言葉からラストの『シャンデリア・ワルツ』へ。どのツアーでも毎回セットリストに入ってくるこの曲だが、何回聴いても飽きないどころかどんどん好きになっている。そして、何よりこの曲はラストを飾るのがよく似合う曲だと改めて感じた。客電が点灯する演出も、武道館公演を彷彿とさせる、ファンにはたまらない演出だった。この曲を聴きながら、彼らの魔法にかかって2万人も観客が集まったという事実に再び感極まってしまい、最後は誰にも見せたくないくらいにはしゃいでしまった。最後のサビに入る前の<世界が始まる音がする>のタイミングで無造作にイヤーモニターを外した斎藤の耳にはどんな音が聴こえ、どんな景色に見えていたのだろうか。このバンドの中で、大きな会場でライブをすることに一番抵抗が無い彼にとって、口には出さないけれども、もしかしたらそれは最高の瞬間だったのかもしれない。何でもなさそうな想いを握ったファンが2万人集まった会場はそれはもう、めちゃくちゃに輝いていたのではないだろうか。少なくとも観客側からはめちゃくちゃ輝いて見えた。本当に最高のライブだった。

 

 どんなに大きい会場だろうと一切普段と変わらないライブを見せてくれた彼らにこれまで以上の信頼感を抱き、終演後もしばらくその場から動きたくないくらいの余韻を感じていた。それでもやっぱり、いつもの規模感でのライブも大好きだということも改めて強く感じた。その規模感で観ることができる4月からの全国ツアー、今から本当に本当に楽しみだ。

 

 

UNISON SQUARE GARDEN TOUR 2017-2018「One roll, One romance」2018年1月28日 幕張メッセ国際展示場1-3ホール セットリスト

  1. サンポサキマイライフ
  2. 徹頭徹尾夜な夜なドライブ
  3. kid, I like quartet
  4. MR.アンディ
  5. シューゲイザースピーカー
  6. リニアブルーを聴きながら
  7. fake town baby
  8. クロスハート1号線(advantage in a long time)
  9. flat song
  10. ノンフィクションコンパス
  11. メカトル時空探検隊
  12. パンデミックサドンデス
  13. 僕らのその先
  14. Silent Libre Mirage
  15. 10% roll, 10% romance
  16. 誰かが忘れているかもしれない僕らに大事な001のこと
  17. シュガーソングとビターステップ
  18. 25:25

<アンコール>

  1. Invisible Sensation
  2. RUNNERS HIGH REPRISE
  3. シャンデリア・ワルツ

2017年 僕の年間ベスト20枚

 明けましておめでとうございまーす!年始早々から大好きなバンドの情報解禁が相次いただめに未だ2017年に閉じ込められている気分の私です。そんな2017年をさっさと終わらせて2018年に向かうためにも(?)、2017年にマイベストアルバム20枚を投下しようと思います。前回、マイベスト30曲を書いた際にコメント書きすぎて地獄だったので今回はシンプルにランキングだけ並べて終わりますね。と、いうことで20位からいきまーす。

 

20位『Blooming Maps』小松未可子

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19位『DADAISM』DADARAY

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18位『Animaplot』Halo at 四畳半

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17位『A GOOD TIME』never young beach

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16位『from Zero to “F”』UNCHAIN

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15位『Awesome City Tracks 4』Awesome City Club

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14位『びゅーてぃふる』ふくろうず

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13位『hanamuke』Hump Back

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12位『熱源』cinema staff

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11位『&DNA』パスピエ

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10位『Memories to Go』the band apart

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9位『Familia』sumika

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8位『ETERNALBEAT』ねごと

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7位『光源』Base Ball Bear

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6位『BOOTLEG』米津玄師

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5位『SHISHAMO 4』SHISHAMO

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4位『熱唱サマー』赤い公園

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3位『NAMiDA』KANA-BOON

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2位『東京カランコロン01』東京カランコロン

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1位『まばたき』YUKI

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 並べて見返してみると、女性ボーカルとポップミュージックが大好きなのがバレバレで恥ずかしいですね・・・笑。あと、曲単位ではJ-POPも結構聴いてたんだけど、アルバム単位では全然聴けてなかったなあと反省。何はともあれ、2017年も素敵な音楽にたくさん出会えて幸せでございました。2018年も積極的にたくさんの音楽に触れていければいいなあと思う次第です。2018年は大好きなユニゾンがアルバムを出してツアーやるし、僕の青春だったチャットモンチーの解散ライブもあるし色々ありますが、そこに留まらず、今までライブにいったことが無いアーティストのライブに出来るだけ多く足を運んでみることが目標ですね。それでは、皆さんの2018年が楽しい1年になることを願っております!また気が向いたときに更新しまーす。

2017年 僕の年間ベスト30曲

 もう12月30日なんですね・・・。今年は個人的に激動の一年だったので、とりあえず1年間をやりきっただけでも及第点かなという感じです。そんな2017年ですが、密かに自分の中で立てていた目標があって、それが「色んな音楽を食わず嫌いせず聴いてみる」でした。思い返してみると僕自身、気に入ったものを曲単位でひたすらにリピートするという音楽の聴き方をしていました。それはそれで良いのですが、何だかもったいない聴き方をしているような気がして、数年前から「アルバムを通して聴く」ということを始めてみたところ、「アルバムの流れ」等々、それまでとは違った楽しみを見つけることが出来ました。それなので、今度は意識的に色んな音楽に触れてみようと思ったというようなところです。昨年、一昨年あたりも意識してはいたのですが、正直あまり達成出来た気はしてなかったので今年は本腰入れて一歩踏み出してみました。結果として、これまでに比べるとそれなりに広く聴けたかなと思います。これまで新しい音楽を聴くときはレンタルショップやCDショップへ毎回足を運ぶ必要があったのですが、今年はApple Musicがあったおかげで聴きたいと思った音楽をすぐに聴ける環境にあったのが理由としては大きいのかなと。

 さてさて、前置きが長くなりましたが、年末なのでそんなそこそこ広めに聴いた曲たちの中から30曲をチョイスしてランキング形式に並べ、1曲ずつコメントしてみました。年間ベストってやつですね。色んな音楽を聴いてみるという目標を置いていたこともあるので、30曲並べるに当たって、「同じアーティストからは最大2曲までしか選ばない。」ということだけ一応自分ルールとして設けて並べてあります。それでは、30位から1曲ずつ紹介していきますね。YouTubeに公式で動画が上がっていたものについては動画もくっつけてます。

(なお、コメントの中で歌詞を引用している部分がありますが、引用部分は<>で括ることとしています。)

 

 

30位『Girls Don’t Cry』Awesome City Club

 

 えっ、E-girls?と間違えそうなくらいドPOPな曲。1個前のアルバムに入っていた『Vampire』といい、PORINボーカルの明るくて可愛い雰囲気の曲がAwesomeの中でも特に好みなのかも。

 

29位『すべては君のせいで』Base Ball Bear

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  3人体制後初のアルバム『光源』のリードトラック。僕自身、青春時代にベボベを通ってきた訳じゃないんだけれども、彼らの曲を聴くと高校生くらいのときの記憶が思い出されたりして、本当にこのバンドは青さをずっと保ったバンドだなあと思わされます。あと、ベボベの曲っていつも絶対に体が動いてしまう気がします。踊れるロックのパイオニアは伊達じゃない。そんな彼らの良さが全部詰まったような「ザ・ベボベ」な曲です。あと、本田翼めちゃくちゃかわいい。

 

28位『Catch the Moment』LiSA

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 我らが田淵智也さん曲。とか言っておきながら去年横浜アリーナで初披露されたときは「うーん、これは田淵曲じゃないな。」と思っていました笑。疾走感の権化でありつつも物悲しい雰囲気も含んだようなこういうタイプ曲、ユニゾンでも聴きたいな。

 

27位『陽』クリープハイプ谷口鮪

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 東京メトロのCMで一聴き惚れ。小林武史のプロデュースだけあってゴリゴリにシンセ鳴っているので、ロックファンの中では好き嫌いが分かれそうだけど、僕の感想としてはクリープのメロディと相性抜群な気がしました。優しくて温かい雰囲気が強調されている印象で僕はめちゃくちゃ好きです。あと、CM聴いて惚れたのと鮪さん好きというのがあるので僕はコラボバージョンの方が好みかな。

 

26位『闇夜に提灯』赤い公園

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 イントロからもうアドレナリンが止まらないですこれ、キメキメでめちゃくちゃかっこいい。赤い公園、これまでもアルバム単位では追ってはいたのだけど、いよいよ本格的にハマりそうだなと思ったタイミングで佐藤さん(Vo./Gt.)の脱退発表があってがっくりだったなあ。ただ、今後も活動は続けるみたいだし、津野米咲という天才がいるので楽しみでもあるからワンマンは今度行ってみようと思っています。

 

25位『Squall』04 Limited Sazabys

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 フォーリミというと正直「あー、あの流行の若手バンドね」くらいにしか思っていなかったのですが、去年出た『eureka』というアルバムを聴いて印象がガラリと変わりました。とにかく曲が良くて、特にメロディがツボな曲が個人的に多い。あと、今年は彼らのライブを初めてまともに観たのですが、絵になるバンドだなと思いました。自分が10代のときにこんなバンドがいたら100%のめり込んでいただろうな。


24位『Flowered』UNCHAIN

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 相変わらずのオシャかっこよさ・・・。しかも、オシャレ一辺倒じゃなく、そこに最高にキャッチーなポップをちゃんと乗せて成立させてるのがすごい。UNCHAIN聴いたこと無い人に聴いてもらいなと思った曲。

 

23位『イト』クリープハイプ

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 クリープは『憂、燦々』あたりで一気に開けたなあと思ったけど、そこから更に1つ上のステージに上るような開けまくった曲だなと思いました。四つ打ちでギターのカッティングがオシャレでホーンのアレンジも素敵で、そんなもん好きに決まってますよね笑。あと、誰かに踊らされているという意味での「糸」と戦略を意味する「意図」を掛けてるのもさすが尾崎さん。


22位『RAIN』SEKAI NO OWARI

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 『RPG』あたりからこの人たちの楽曲って良曲ばっかりな気がする。色々な意見はあると思うけど、それでも日本の音楽シーンのド真ん中に居続けられてるって、多分並大抵のことじゃないと思う。この曲、メロディはいつもの通り文句無しのポップさでもちろんすきなのですが、歌詞も<傘を差し出す君に映る僕は濡れていない 水たまりに映る僕は雨に濡れてた>等、すかし過ぎてないけどオリジナリティに溢れていて好きです。


21位『流星ダンスフロア』ORESAMA

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 YouTubeサーフィンをしてたときに広告で流れた曲が物凄く好みで、色々調べてみるとORESAMAというバンドだということが分かって一通り聴き漁った。そんな矢先にアニメ「魔法陣グルグル」のOPをやるという情報を見て歓喜。『イト』のことでも書いたけど、こういうハイパーウルトラ超POPみたいな曲、嫌いな訳ないですよね。Shiggy Jr.とかSHE IS SUMMERあたりが好きな人は間違いなく好きなんじゃないかなあと。


20位『リボン』BUMP OF CHICKEN

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 シンプルに良い曲ですよね。CMで流れてるのを聴いてiTunesストアに秒で駆け込んでダウンロードしました。BUMPの曲って「このジャンル」みたいな区分けの出来ないオリジナリティがあるんだけど、それが大衆にも届く普遍性と同居してるのが本当に凄いなあと毎回思う。ツアー行きたかったけど当たらなかった、残念。


19位『ノンフィクション』平井堅

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 TVドラマ「小さな巨人」の主題歌。冒頭のストリングスがドラマの壮大な雰囲気とマッチしすぎていてEDで流れる度に毎回鳥肌だった。で、そのままストリングスまみれの曲になるのかと思いきや1番まるごと歌とアコギというまさかのシンプルな構成。2番Bメロで突然入ってくるベースとドラムも素敵。意表をついてくる構成だなあと思って編曲を見たらまさかの亀田誠治さん。亀田さんなら1曲丸ごとストリングスまみれにしそうだから意外だった。とりあえず良い曲です。

 

8位『TOKYO GIRL』Perfume

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 TVドラマ「東京タラレバ娘」の主題歌。この曲もEDでイントロが流れる度に鳥肌が立ったし「うおおお、最高だ、でも来週まで待ちきれない・・・。」って思ったなあ。流すタイミングもあるんだろうけど、イントロでどれだけ視聴者の興奮とか感動を誘えるかって、良い主題歌の大きな条件なのかもしれないですね。Perfumeは本当に安定して良い曲出すので1回ライブに行ってみたいなあ、演出も凄いみたいだし。チケット取れなさそうだけど・・・。

 

17位『Magical Fiction』チャットモンチー

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 跳ねたリズムがとっても心地良い曲。未だにチャットモンチーが「完結」してしまうことを受け止められてないので、この曲の<どんな平穏にも必然のさよならを バイバイ>あたりで目頭熱くなってしまう・・・。Galileo Galileiも然り、僕の青春だったバンドがどんどん完結してしまう。とりあえず悔いの無いようにラストライブは目撃しておきたい。

 

16位『青空のラプソディ』fhána

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 「POPな曲とは」というのを完全に体現してるなと思える曲。Aメロ/Bメロ/サビ/Cメロと結構めちゃくちゃなことやってる感じがするんだけど、それが自然に繋がって聞こえるのが何か最近ユニゾンっぽい気がする。アニソン界隈の外へも普通にリーチ出来る人たちな気がするんだけど、そこら辺のプロデュースをちゃんとやってくれる気がしないLantisさん・・・。nano.RIPEの二の舞にして欲しくないなあ。


15位『ピースサイン』米津玄師

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 音楽の好みが似てる人たちがこぞって米津さんを推しているにもかかわらず、自分の中ではいまいちピンと来てなかったんですが、この曲で完全に良さを理解した。言葉数がとても多いんだけど、それが綺麗に気持ちよく転がっていく感じがとても気持ちいい。特に「さらば掲げろピースサイン」のとこがメロディ含め最高。


14位『Swing heart direction小松未可子

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 TVアニメ「ボールルームへようこそ」2クール目のED曲。プロデュースは我等が田淵智也さんも所属する天才集団Q-MHz。冒頭から末光篤さんが弾いているピアノと他楽器のキメが絡み合っていてめちゃくちゃ気持ちよい。そして何より、1番サビの歌詞がアニメと近づき過ぎて無いけども観た人はニコニコしちゃうみたいな完璧な距離感で流石だなあと思いました。最終回のEDでこの曲が流れたときは今年で1,2を争うレベルで昂ぶった。


13位『さよならバイスタンダーYUKI

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 最近のYUKI、覚醒し過ぎじゃないですか???個人的に『FLY』があんまり響かなかったから勝手に少し不安になっていたのですが何のその、『ポストに声を投げ入れて』以降に出た曲が漏れなくドストライク。YUKIの1番好きなアルバムは『megaphonic』なんですが、最近の曲はその疾走感ある元気な雰囲気と『FLY』の大人な雰囲気がちょうど良く混ざってる感じがするなあと思います。この曲も、キャッチーさと疾走感の中に大人な雰囲気が同居していて、そのバランスが個人的にはとても好きです。


12位『春風』sumika

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 大躍進の2017年になったsumikaさん、結構色々なタイプの曲を作ってると思うんですが、代表曲の『Lovers』や『MAGIC』みたいな底抜けに明るいタイプの曲よりも疾走感の中に物悲しさが見え隠れするみたいなタイプの曲のほうが好きで、そんなタイプの中でもダントツに好きな曲です。<春のような貴方へ>とか人生で1回くらい言われてみたいですね。

 

11位『ALL RIGHT』ねごと

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 『VISION』の後くらいからエレクトロな方向へ一気に舵を取ったねごと、個人的にエレクトロなサウンドに偏り過ぎているが曲ってそんなに好きではないのですが、この曲くらいバンドサウンドが響いてる中に入ってくるエレクトロ感は大好きです。爽やかさもありつつ浮遊感もあるし、今のねごとにしか作れない曲なんじゃないかなあと思います。3:31という絶妙な短さも相まってか、気がつくと何十回もリピートしちゃう曲。


10位『カメレオン』赤い公園

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 『闇夜に提灯』もそうだけどイントロからもうたまらんです。いつまで続くんだよみたいなスネアの連打からホーンがバキバキに鳴ったイントロへ突入するのが最高にかっこ良い。<ねえ本当の自分って意外と探すまでもない>とかいう名言をサラっと書いてしまう津野米咲さん、本当に同い年かよ信じられないくらい天才だ。ちなみに赤い公園が今年出した『熱唱サマー』というアルバムは1曲めが『カメレオン』で2曲目が『闇夜に提灯』なのですが、その2曲の繋ぎがもうかっこよすぎて失神するレベルなので興味がある方は聴いてみて下さい。


9位『どういたしまして』東京カランコロン

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 カランコロンは出てきたばっかりの頃、それこそ『少女ジャンプ』とか『ラブ・ミー・テンダー』の頃、ツインボーカルのハモリと独特のメロディが好きでよく聴いてたんですが、avexに移籍した辺りから全然聴けてませんでした。ですが、今年YouTubeサーフィンをしているときに偶々この曲に出会って、好みドストライク過ぎて度肝抜かれました・・・。調べてみるとどうやら今年2017年にavexを抜けてTALTOというレーベルに移ったんですね。制約が多くてやりにくかったのかなと邪推してしまいますが、とりあえずこの曲は最高。特にAメロの<温度無きゃ単なるイミテーション>の部分がメロディから譜割りから何から何まで好み過ぎてもはやこれは性癖なんじゃないかなと思ってますね笑。


8位『明日も』SHISHAMO

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 NTTドコモのCMに起用されたこの曲、仕事がつらい時期に毎日のように聴いていて、1番の歌詞、特に<良いことばかりじゃないからさ 痛くて泣きたいときもある>というキラーフレーズに元気をもらってため、個人的に思い入れのある曲です。宮崎さん(Vo./Gt.)自身は、この曲のような応援歌めいた曲はSHISHAMOに似合わないという風に考えているようですが、僕みたいにこの曲に元気をもらっている人がいるのも事実ですし、何よりこの曲でSHISHAMOがJ-POPど真ん中というフィールドで十分に戦っていけるということを示すことが出来たのもまた事実。この曲以降飛ぶ取り落とす勢いの彼女たちですが、今年はなんと紅白歌合戦にも選出されましたね。紅白を期にまた1つ上のステージに行くのは間違いないと思うので、今からとても楽しみです。


7位『flat song』UNISON SQUARE GARDEN 
 

 8月にリリースされたシングル『10% roll, 10% romance』のカップリング曲。ユニゾンといえばこのシングルの表題曲である『10% roll, 10% romance』に代表されるような言葉数がとにかく多くて明るい曲のイメージが先行していると思いますが、最近はミドルテンポ以下の曲にも負けないくらい良曲がかなり集まってきていると思います。これは田淵(Ba./Cho.)のソングライティング技術の向上もさることながら、斎藤(Vo./Gt.)の歌唱力の向上もおそらく大きな理由になっているんじゃないかなと思います。

 最近は田淵も斎藤もユニゾン意外での活動が増えてきているけど、それをこういう形でちゃんとバンドへ還元することが出来ているのが本当に素敵だし理想的だ。この曲は年前からあった曲みたいだけど、全員の技術が向上して脂が乗り切っている今このタイミングで出したのは本当に正解だと思う。それにしても<まだ幼い君の心に合わせようとしゃがみかけてさ ちょっとかかと浮かすよ すぐ大きくなるだろうから>とかいう歌詞、田淵さんパパにでもなったんですかと言いたくなる優しさで毎回咽び泣きそうになるよね・・・。

 

6位『バトンロード』KANA-BOON

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 TVアニメ「BORUTO-ボルト- -NARUTO NEXT GENERATIONS-」のOP曲。この曲はとにかく歌詞が良いです。KANA-BOONといえば谷口鮪(Vo./Gt.)の作る人懐っこいメロディと四つ打ちのリズムにスポットライトがあたることが多いですが、『Origin』あたりから歌詞がとても良いのです。この曲で言うと<今は涙の種だって 咲かせれば偉大な伝承花>、<理想 思想 君だけの軌道に沿うものだけは手離さないでよ>といった感じで、決して分かりやすく無いけれども、何だか口ずさみたくなってしまいたくなるような綺麗な日本語が多いです。中でも僕が特に好きなのが<彼方を今に追い抜いて 空色の日々は満身創痍>という歌詞です。何が好きかと言うと、彼らの現状を綺麗な日本語で端的に表しているところです。彼らは絵に描いたような華々しい道を歩んできましたが、その結果、目まぐるしく変わっていく環境に日々追いつくだけで精一杯で、音楽を楽しむ余裕すらないくらいに辛い時期もあったようです。そんな状況を、直接的な言葉を使わずに綺麗な日本語に変換して歌詞に出来るのは本当にすごいなあと。デビュー当時の売り出し方が極端だったためにとかく勘違いを受けやすいバンドですが、本当に良いバンドだと思うので是非この曲からでも聴いてみて下さい。

 

5位『背中越しのチャンス』亀と山P


 TVドラマ「ボク、運命の人です。」の主題歌。この2人と言えば、2005年にTVドラマ「野ブタ。をプロデュース」の主題歌『青春アミーゴ』でミリオンを達成して一世を風靡しただけあって、本当に華やかで絵になって、同性ながら憧れてしまいます。そして何より曲が良いです。四つ打ちに分かりやすい美メロな、これぞJPOPな曲で「あーやっぱりJ-POPって最高だよな」と思わせてくれます。メロディでいうと<好きの二文字を この声で>のメロディがツボすぎてここだけ何度リピートしたことか笑。東京カランコロンの『どういたしまして』といい、自分のツボなメロディってあるんだけど、音楽的素養が無くてそこらへんを一般化出来ないのがもどかしいところ・・・。あとこの曲、大サビ以降のたたみかけがめちゃめちゃにかっこいいので是非聴いてみて下さい!(公式動画は無かったですが、そうでないものは上がっているみたいです。)

 

4位『星丘公園』Hump Back

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 このバンドをオススメするためだけにこのランキング書いたと言っても過言じゃないくらい、この曲のイントロを聴いた瞬間、今年というか数年ぶりの衝撃でした。もしかしてとんでもないバンドを見つけてしまったのでは??という謎の動揺をしてしまうくらいの衝撃。そんなHump Backは、2009年に大阪の高校の軽音楽部で結成されたスリーピースバンドで、メンバーは全員23歳とSHISHAMOあたりと同世代。もっと若いのかなあと思ったけども意外とキャリア長い。話が少しそれましたが、この曲を一聴した瞬間にチャットモンチーの『サラバ青春』が頭に浮かびました。曲自体の雰囲気もそうだし何かこう、青春時代が一気にフラッシュバックする感じ。チャットモンチーが「完結」してしまうこのタイミングでこういうバンドが出てきたのがすごくグッとくるものがありますね。(実際に、Vo./Gt.の林萌々子さんはチャットモンチーをリスペクトしているそうです。)

 この曲、歌詞も凄いなあと思いました。例えば<コンクリートをカチ割るようなアオい青春は 何処にも行けずに空を眺めてる>とか<制服の裾を掴むような淡い初恋は ようやく居場所を見つけたみたいだ>とか<シのゴの言わずに夢を見て 明日のことは忘れてしまうのさ>とか…こういう「意味は掴みきれないけど日本語としてとても綺麗な歌詞」を個人的に「スピッツ的な歌詞」と呼んでいるのですが、Hump Backの歌詞は他の曲含め結構スピッツ的だなあと思います。YouTubeで他の曲もたくさん公開されているので是非聴いてみてください、オススメです。

 

3位『1987→』スピッツ

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 7月にリリースした『CYCLE HIT 2006-2017 Spitz Complete Single Collection』に新曲として収録された3曲のうちの1曲。この曲は「バンド結成当初の“ビートパンクバンド”スピッツの新曲という想定で作った曲」だそうです。スピッツといえば一般的には『チェリー』や『ロビンソン』のような王道のJ-POPのイメージを持っている方が大半だと思いますが、実は結成当初はパンクロックバンドとして活動していたんです。そんなパンクロックなスピッツの新曲を今のスピッツがカバーしたかのようなこの曲は、インディーズ時代の『泥だらけ』という曲から引用したイントロから始まります。歌詞の中にも<それは今も続いてる 泥にまみれても>という一節が出てきていて『泥だらけ』を強く意識しているのが伝わってきます。それにしても、インディーズ時代の曲を引用して<今も続いてる>と言ってくるあたりが最高に憎くて最高にかっこいい・・・。

 中でも僕が1番感動したのが<ヒーローを引き立てる役さ きっとザコキャラのまんまだろう 無慈悲な鏡叩き割って そこに見つけた道>という歌詞で、国民的なバンドが何を言っているんだよという感じですが、確かにドーム公演をバンバンやるようなバンドでもなければ皆が最新曲を追っているバンドでもない、言ってしまえば異端児ではぐれ者だけれど、それでも「自分たちのやり方を貫いてここまでやってきたんだ」という自負がこの一節からは感じられたのでめためたに好きです。あと、この「ザコキャラ」という表現はおそらく同世代で常に比較されてきたミスチルを強く意識しているが故に出てきたフレーズなのかなあと邪推しました。

 全然関係ないですが、なんかこの曲、ユニゾンの『プログラムcontinued』と空気感が似てるんですよね。やっぱりこういう気取ってないけどロマンに溢れてるみたいな曲、大好きです。             

 

2位『フラッグを立てろYUKI

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 TVアニメ「3月のライオン」のOP曲。こういうタイプの曲って無限に聴けちゃいますよね。ここ最近狂ったようにリピートしてます。YUKIって内省的な歌詞を書く人だと思うんだけど、その内省的な部分が3月のライオンと絶妙にマッチしてるなあと思います。例えば、<僕は僕の世界の王様だ 水の上も走れるんだ>は周囲との関わりが苦手である故に、将棋という世界に自分を見出している零にリンクするし、<いつだって上手く生きられないわ>なんかは不器用ながらも強く生きていくそれぞれの登場人物にリンクします。そんな不器用な人間を描いたこの曲ですが、<ひとつ ふたつ ため息さえ抱いて ステップ踏み鳴らすのダンサー>、<さしあたりこの行く末は どうやら喜劇になりそうだ>と、辛いことの先にある明るい部分にもちゃんとふれているところが好きだなあ。サウンドについては、初春の雨上がりの晴れた日みたいな爽やかさと綺麗さの混じった柔らかい雰囲気で、こちらも3月のライオンにぴったり。本当に流石です。この名曲に続くユニゾンの『春が来てぼくら』、期待しかないですね。

 

1位『Invisible SensationUNISON SQUARE GARDEN

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 ようやくここまで来ましたが、もう1位は出来レースみたいなとこありますね笑。自分が1番好きなバンドの曲を1位にするのも何かダサいのかなと思いつつも、やっぱりこの曲は間違いなく良かったし、圧倒的な回数聴いたので1位にせざるを得ませんでした。TVアニメ「ボールルームへようこそ」のOPであるこの曲、クライマックスに向かって加速していくストーリーにぴったりな疾走感満載のユニゾンらしいPOPな曲です。また、サウンド面だけではなく歌詞の部分でも「努力と才能もあわせ持った人間だけが勝ちあがって行くのが勝負の世界」ということを歌っており、競技ダンスの世界とリンクしています。また一方で、この歌詞は自らのバンドや音楽の世界について歌っているとも解釈出来ます。

 と、いったことは各所で書かれているのでうだうだ書いても仕方ないですし、僕自身この曲については何回も聴いて考察していく中で惚れ込んでいった訳ではなく、アニメのOPでワンコーラス聴いた時にはもう既に今年の1位となることが確定していました。何がそんなに刺さったのか考え直してみると、まずシンプルにメロディが好きなのが一番の理由なのかなと思います。Aメロ/Bメロ/サビどこを取ってもメロディがど真ん中ストライク。特にBメロからサビに向かって盛り上がっていく部分は何度聴いても初恋かよみたいなレベルで心拍数上がります。歌詞についても、最近のユニゾンの曲に多い「大変なこともあるけど、生きてれば良いことあるから頑張ってみようぜ」みたいなスタンスがこの曲にも色濃く出ていて、聴く度に背中を優しく蹴っ飛ばされる感じがして好きです。

 ここにきて語彙力を失ってしまっているのがファンの性という感じですが、とにかく良い曲なので、もっと色んな人に聴かれれば良いのになあと思います。正直この曲を聴いたときに『シュガーソングとビターステップ』並に売れると確信して止まなかったのですが、蓋を開けてみると2017年に出したシングルで1番売り上げ枚数が伸びなかったと聞いてびっくり。やっぱりヒットするには色んな要素が重なる必要があるのかな。それでも僕の中では2017年の圧倒的No.1ソングです。

 

 そんなこんなで以上でーす。1つずつレビューしていくの、地獄のように大変でもうやりたくないのでアルバム編は20枚並べて終わりにします(笑)と、いうことで数日以内に更新しまーす。年内に更新できないかもしれないのでとりあえず皆さん、良いお年を!!

聖地としての日本武道館は消えてしまうのか

 前回の記事、たくさん反応頂けて結構真面目にびっくりしました…!どの反応もうれしかったのですが、「同じことを疑問に思っていたけど納得した」や「記事を見てCIDER ROADを改めて聴き直した」みたいな反応を貰えたのは素直にめちゃくちゃ嬉しかったです。読んで頂いた方、ありがとうございました!

 さて、今回もぼんやり思っていたけれどもしっかりと頭の中でちゃんとまとめたことが無かったシリーズで、「最近、聖地としての日本武道館の価値が下落しているように感じるがそれは何故なのか?」ということについて書いてみました。「最近、武道館安売りしぎじゃない?」と思っている方も、「浅いキャリアですぐ武道館公演やっても別によくない?」と思う方も、暇つぶしに読んでいただければ嬉しいです。

 

聖地としての日本武道館

 

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 「日本武道館」と聞いて皆さんは何を思い浮かべますか?答えは色々あるとは思いますが、この文章を読んでいる人であれば8割方「ミュージシャンの聖地」と答えるのではないでしょうか。そもそも武道館は、1964年の東京五輪の際に武道競技会場として建設されました。その後、1966年にミュージシャンとして初めて武道館のステージに上がったのがかのビートルズです。当時は現在よりも「日本武道の聖地」という意味合いが強かったこともあり、波紋を呼んだようですが、結果としてビートルズを皮切りに、国内外の様々な著名ミュージシャンが武道館でライブを重ねていくようになりました。その中には、解散などの大きな節目に初めて武道観公演を行ったようなミュージシャンもたくさんいれば、武道館のステージに142回も立っている矢沢永吉のような恐ろしいミュージシャンまで様々です。しかし、一つだけ確かに言えることは、日本武道館は、建設されてから現在までの長くて尊い歴史を、音楽と共に刻んできたということです。そういった歴史を刻んでいく中で、武道館のステージに立つことはミュージシャンにとっての大きな憧れや目標となり、いつしか“聖地”として扱われていくようになりました。

 

武道館の価値のインフレ

 

 しかし、その“聖地”としての武道館の価値は、近年じりじり下落していると言わざるを得ない状況にあるような気がします。そもそも、聖地としての武道館が価値をもっている理由は2つあると考えていて、1つは上で述べた通り刻まれてきた歴史があること。もう1つは、長い時間をかけても中々たどり着けない場所だという面があることです。この2つが重なり合い、なかなかたどり着けない聖地にたどり着いた瞬間の感動が、ミュージシャン・ファン双方にとっての大きな価値になっているのかなと思います。しかし近年、結成orデビューして間もない若手ミュージシャンの初武道館公演が、明らかに急増しているように思えます。分かりやすくするために非常に乱暴な表現を使いますが、いとも簡単に聖地のステージに上がるミュージが増えているように思えるのです。ここで、結成から初武道館公演を達成するまでかかった年数の下落トレンドを表す時系列データでも示せれば説得力があってかっこいいのですが、無理でした、ごめんなさい笑。それなので、この記事も数ある意見の一つの程度に考えてもらえたらいいかなと思います。話はそれましたが、相次ぐ若手アーティストの初武道館公演によって、武道館の聖地としての価値がインフレを起こしているような気がしてならないのです。

 

相次ぐ若手ミュージシャンの武道館公演とその要因

 

 では、いとも簡単に初武道館公演を達成する若手ミュージシャンが急増しているのは何故なのでしょうか?個人的に、これには2つの理由があると思っています。

 

 1つ目は、ライブ人口の増加によって、集客が以前よりも容易になっているということです。ぴあ総研の『2016ライブ・エンタテイメント白書』によれば、国内のライブ市場は2006年から2015年の間に1,527億円から3,405億円へと2倍以上に拡大したとのこと。ちなみに、ライブ動員数は2,454万人から4,486万人と、こちらもほぼ2倍に拡大しています。これらの数字を見る限り、ライブへ足を運ぶ人の数は明らかに増加していると推察できます。言い換えれば、「ライブへ行く」ということへのハードルが、ぐっと下がっているということになります。つまり、人気や実力がそこまで突き抜けていないようなミュージシャンでも、8,000~10,000人程度である武道館のキャパシティを埋めることは、昔と比べて難しいことでは無くなってきているということです。

 

 2つ目は、ミュージシャンが持つ武道館に対する意識の変化です。どんな変化かというと、一般的にこれまでは価値のある大きな“目的地”であった武道館が、数ある“通過点”の1つへと変化してきているのです。極端に言うと、それなりの大きなキャパを持った会場の1つに過ぎない存在になっているということです。では、いったいどこへ向かうための通過点なのかというと、武道館よりも大きなキャパシティを持った、アリーナやドームといった会場です。昨今、アリーナやドームクラスで行われるライブが明らかに増えてきている印象があります。実際に、ぴあ総研の『2016ライブ・エンタテイメント白書』によれば、ライブの年間公演回数は2006年の47,632回から2015年の56,042回と、上で示した市場規模の上昇と比較すると緩やかな上昇となっており、ライブ1回あたりの動員数が増えていること、つまり、アリーナやドームで行われるライブが増えてきていることが推察されます。アリーナやドームといった会場でのライブの出現によって、これまでミュージシャンにとって絶対的な到達点であった武道館が、更に大きな会場へ向かうための数ある通過点の1つに過ぎない存在へと変化してきているのではないでしょうか。

 

 また、そういった意識の変化を起こしている要因は、大会場でのライブの出現以外にもあると考えています。それがフェスの増加です。これは各所で述べられていることではあるので今更感もありますが、フェスには明確なストーリー性が存在します。フェスの会場では、キャパシティ別にステージがいくつにも分かれており、出演アーティスト同士でより大きなキャパシティのステージを奪い合うゼロサムゲームが行われています。小さなステージで演奏していたアーティストが、そのステージを入場規制にし、翌年はより大きなステージへ進んでいくというストーリーに、観客は心を奪われるのです。更に、最近はTwitter等のSNSを通じて、そういった観客のリアルな感動をアーティスト側が直接的に受け取ることが出来ます。簡単に言うと、演者と観客の間に相互依存が発生しているのです。そして、一度そういった相互依存が発生すると、アーティスト側は「何としてでも次のステージに進まなければならない」という強迫観念に駆られていくことが容易に想像できます。こういったスパイラルが、フェスの絶対数増加という要因も相まって何度も何度も繰り返されていき、その結果として、次のステージに進むこと、つまりは「より多くの動員数」が大事であるという価値観が幅を利かせるようになってきているということです。そういった価値観が大きくなることによって、キャパシティにおいてアリーナやドームに見劣りしてしまう武道館は、大会場へと向かうための通過点として必要な、それなりに大きな会場の1つに過ぎない存在であるという意識へ変化してきているのではないでしょうか。

 

 ごちゃごちゃしたので簡単にまとめると、デビューして間もない若手ミュージシャンの初武道館公演が急増している理由は「集客が容易になっていること」と「武道館に対するミュージシャンの意識が変化していること」の2点で、前者は「ライブ人口の増加」、後者は「フェスの増加によって、動員数やキャパシティを重要視する価値観が浸透してきたこと」が理由だということです。(ライブ人口の増加の一端を担っているのもフェスのような気はしますが…。)

 

長い時間を掛けて武道館へたどり着いたミュージシャンとその価値観

 

 いとも簡単に初武道館公演を達成するミュージシャンが増えている一方で、デビューから初武道館までに長い年月がかかったバンドもたくさんいます。その代表格としてあげられるのが、スピッツthe pillowsフラワーカンパニーズといったベテラン勢を中心としたミュージシャンです。彼らが初武道館公演を達成したのは、結成orデビューから少なくても20年以上が経ってからのことです。初武道館のステージに立つまで時間がかかった背景はバンドによって様々ですが、共通して言えることが1つあります。それは、時間がかかって(あるいは意図的に時間をかけて)たどり着いた場所だからこその感動があるということです。例えば、the pillows山中さわおさん(Gt./Vo.)は、武道館公演の中でこんな言葉を残しています。

 

「長い間、音楽業界の端っこで流行りもしない音楽を鳴らしていました。今日、武道館のステージに立って、何かを、何かを成し遂げたんだったら…もし、もしそうなら…俺は嬉しいぞ!」

 

「涙が出そうになるくらい嬉しかった事なんてほとんど無かったけど、今日ここで君たちに出会えたことがそのひとつになりました。ありがとう!」

<BARKSの記事(2009.9.18)より引用>

 

 

 長年追い続けてきたバンドに聖地でこんなこと言われたら、そりゃあ感動せざるを得ないですね…笑。僕自身、the pillows含め上に書いたアーティストの武道館公演には足を運べていないのですが、ライブ後のSNSやレポートから伝わってくる熱量が、若手バンドのそれとは全く別物だなと強く感じたことは覚えています。もちろん、デビュー早々に武道館にたどり着いたミュージシャンのライブにだって感動はあるのかと思いますが、こういった圧倒的な説得力を持つ感動的な言葉を紡げるのも、そのアーティストが長い年月をかけて武道館にたどり着いたという文脈があってこそだと思います。

 

 また、上記の言葉から、the pillows自身が武道館公演に対して物凄く喜んでいることが分かります。では、それは何故なのでしょうか?武道館のキャパを埋めたことでしょうか?その先にあるアリーナやドーム公演へ辿り着ける未来が見えたからでしょうか?僕は多分違うと思います。彼らが喜んでいるのは、長年音楽を続けてきてようやく武道館という聖地にたどり着き、かつ長年それを見守ってきてくれたファンと共にそのことをお祝い出来ているからなのではないでしょうか。つまり、彼らにとっての武道館公演は、8,000~10,000人くらいのキャパシティを持った会場でライブが出来たという“量的”な価値観ではなく、歴史ある聖地でファンとお祝いが出来たという“質的”な価値観で捉えられているということです。そしてこの“質的”な価値観こそが、武道館の歴史と共に刻まれてきた価値観であり、この価値観が武道館の聖地としての価値を守ってきたのだと思います。

 

まとめと個人的な意見

 

 ここまで、武道館公演の価値が下がってきている問題ついて、浅いキャリアで武道館公演を達成したアーティストと、長い時間を掛けて武道館公演を達成したアーティストと対比させる形でその原因について考えてきました。前者の量的な価値観が幅を利かせてきたことによって、後者の質的な価値観がいまや絶滅危惧種状態となり、浅いキャリアのアーティストの武道館公演が急増していることが原因としてあるのではないかなというのが今回の結論です。   

 

 誤解を招きそうなので弁解しておきますが、客観的な視点で考えたとき、浅いキャリアで武道館のステージに上がることが悪いことだとは僕は思いません。なぜなら、時代が変われば価値観も変わるのは当然で、武道館に対する価値観も、時代や外的環境の変化とともに質的なものから量的なものに変わり、それに伴って聖地としての価値も段々と薄れてきた、ただそれだけの事実です。そこに良いも悪いも無いのかなと思います

 

 さて最後に、これは100%僕の個人的な意見です。最近の流れを見ていると、どうしてもモヤっとした疑問が浮かんできます。それは、量的な価値観の下に武道館のステージに上がったアーティストが、武道館の質的な価値観に頼っているように見えることです。もう少し具体的にいうと、更に大きなステージへの通過点として武道館に立ったキャリアの浅いアーティストが、「ようやくたどり着いた」感を煽り、聖地としての武道館の価値を強調しているように見えることが少し疑問なのです。なぜなら、強調しているその聖地としての価値を下落させている要因の一端を担っているのは自分達自身であり、それによって、今後質的な価値観の下に武道館公演をやるアーティストの価値を落としてしまっているということに全く無自覚であるように見えるからです。もし浅いキャリアで武道館公演を切るのであれば、「徹底的に量的な価値観に振り切る」 or 「聖地としての価値に傷をつけてでもステージに立つという相応な覚悟を持つ」ことが、聖地としての武道館の価値これ以上落とさないためには必要なのかなあと思います。

 

 以上です。長々とお付き合い頂きありがとうございました!今年は年間ベスト的なやつ含めてあと2回くらい書こうかなと思っているので、気が向いたら是非読んでやってくださいね。それではまた~

 

【参考URL】

①ぴあ総研『2016ライブ・エンタテイメント白書 サマリー』

http://corporate.pia.jp/news/live_enta2016_summary.pdf

②BARKS『「涙が出そう・・・」結成20周年のthe pollows、初の武道館ライブで1万人が祝福』

https://www.barks.jp/news/?id=1000053194

『CIDER ROAD』と「名前」について

折角One roll, One romanceツアーの高知公演に参加したので、そのレポでも書こうかなあとも思ったんですが、ライブ中にとある(ウルトラ個人的な)事件があって、それ以降の記憶が無いに等しい程度には曖昧なので、他の公演で記憶が鮮明なときに書こうと思います。で、かわりに今回何を書こうかなあどうしようかなあと色々考えたのですが、これまでずっと不思議に思っていたけど深くは考えてこなかったことがあって、良い機会なのでそれについて自分の中で整理する意味も兼ねてつらつらと書こうかなと思います。今から書くことは半分妄想で真実とは限らないので、あくまでも一つの考察として読んでいただけると嬉しいです。まともに書けるか不安ですが、ぱにゃにゃん。

 

さて、今回はUNISON SQUARE GARDENのメジャー4thアルバム『CIDER ROAD』について書いてみようかなと思います。僕自身、世の中に存在するアルバムの中でこのアルバムが1番好きだと胸を張って言える程最高なアルバムなのですが、多分最高なことは大方の人が知っているし、色んな人がこのアルバムの良さについては既に語ってくれていると思うので、ちょっとだけ違う切り口で考えてみます。

 

「cider road」の画像検索結果 

 

その切り口は“歌詞”です。実はこのアルバム、収録されている曲の歌詞に少し不思議な共通点があります。実際にその該当部分を見てみましょう。

 

 

【「like coffeeの呪文でいつでもそこに出会えるよ、バイバイ」 そして僕は君の名前を呼んだ・・・今!】

<like coffeeのおまじない>

 

【揺れる感情の渦で 触れる感情の名前呼んで 名前ないなら適当に付けよう 確かそんな法律もあったし】

<お人好しカメレオン>

 

【なんて名付けよう まだ小さな僕の感情が 生み出す世界の 端っこに浮かぶ何か】

<光のどけき春の日に>

 

【君の名前を呼ぶよ 大切でほら 譲れない名前を 僕だけが知ってる だから優しい声で、君はともだち】

<君はともだち>

 

【ちゃんと名前もある 譲れない物もある】

<シャンデリア・ワルツ>

 

 

 

分かりましたでしょうか?実はこのアルバム、結構異常な頻度で「名」や「名前」と言う歌詞が出てきます。このアルバム以外の曲にも名前に関する歌詞は出てはきますが、ちょっと偶然とは言い切れない頻度だと思います。では何故、名前に関する歌詞がここまで多用されているのでしょうか?僕なりに一つずつ考えてみました。

 

「名前」とは?

そもそも、「名前」という言葉はどういった意味を持っているのか、久しく引いてなかった国語辞典を引いてみたら、こんな風に載っていました。

 

 

【名前(なまえ)】

ある人や物事を他の人や物事と区別して表すために付けた呼び方。名。

三省堂 大辞林より引用>

 

 

少し噛み砕いて言うと、何かと何かがそれぞれ別のものであることを示すためのものが名前です。例えば日常生活で考えると、「あれ取って!」と言っても、深い関係性が築かれている場合を除いて、「あれ」が何を示しているのか伝わりません。しかし、「箸取って!」と言えばほぼ100%相手に伝わります。「箸」という名前があることで、食事に使う2本の棒を、その他有象無象から区別することが出来ているということです。

 

物だけでなく人も同じで、一人ひとりに固有の名前がついていることで、あらゆる人間の中からある人間を特定することが出来ます。また、他人から自分の名前を呼ばれることで自分が自分であることの認識もできます。つまり、名前とは「アイデンティティの象徴」であるということです。

 

CIDER ROAD』というアルバムとその位置づけについて

 冒頭でも触れたとおり、『CIDER ROAD』はUNISON SQUARE GARDENのメジャー4thアルバムです。このアルバム、良いアルバムであると同時に、バンドにとって大きな意味を持つアルバムでもあると思います。というのもこのアルバムは、メジャー3rdアルバム『Populus Populus』で実験的に挑戦した、「最高のロックバンドが最高のポップスをやる」というスタイルを極限まで突き詰め、「UNISON SQUARE GARDENとはこういうバンドだ!」ということを、世の中に分かりやすい形で宣言したものだからです。と、言ってもあまりにざっくりとし過ぎているので以下で詳しく説明します。

 

今となっては華々しい道を歩いてきたように見える彼らですが、メジャー2ndアルバム『JET.CO』のあたりの時期はバンド内の空気も悪く、本人たちも“闇期”と称するほど大きな苦労を重ねていました。その一番大きな理由は、田淵(Ba./Cho.)の作りたい曲とプロデュース側が求める曲の間にギャップがあったことだと思います。プロデュース側が「売れるためにもっと分かりやすい曲を」という要求をした結果、自分の曲を理解してもらえないと感じた田淵の、プロデュース側に対する不信感が大きくなり「事務所を辞めたい」と言い出すこともあったようです。そして、バンド内・チーム内の空気の悪さがピークを迎えたとき、この闇期を最も象徴する出来事が起こります。それは、斎藤(Gt./Vo.)が作詞作曲を手がけた『スカースデイル』をA面としたシングルがリリースされたことです。プロデュース側が納得する曲が中々出てこない状況の中で、他のメンバーも曲作りにトライした結果です。

 

 

田淵 「すごくショックだったんですけど、売れない歌詞を書いてるからしょうがない、みんなで書き始める時期なんだって思ってた時期だった。『スカースデイル』の時は、最後まで僕の曲も残っていたんです、決定の直前まで僕の曲で行くと思っていたんです。まだ自信があったから(笑)。でも、決定した瞬間に「えっ、うそ?」って(笑)当時はクソガキだったから、自分のものだけが最高だと思っていたんですよね、今でも思っているんですけど(笑)全然良い曲を作れていないのに、そこに気付けていなかった。だから、『スカースデイル』がシングルで出るというのは僕の中でも衝撃的な出来事だった。」

<DUGOUT ACCIDENT SPECIAL BOOKLET 内のインタビューより引用>

 

田淵「やっぱり、自分の作った曲がシングルにならないっていう経験をしたことで(『スカースデイル』のこと)」、何だったら俺は勝てるんだろう?っていうことを無意識に模索していた時期なんでしょうね。『Populus Populus』の一部として、“オリオン~”ができて、それを突き詰めた結果として出来上がったのが『CIDER ROAD』だったんですよ。

<MUSICA 2017年11月号のインタビューより引用>

 

 

 

この出来事に大きな衝撃を受けた田淵は、それまで以上に「自分が出来ること、勝てるところはどこなのか?」ということを意識しはじめ、結果として、「最高のロックバンドが最高のポップスをやる」というスタンスにたどり着きます。そしてそのスタンスの実現にあたって田淵は、それまでプロデューサーやリスナーに対して「自分の頭の中にあることは、言葉や音にして説明しなくても伝わる」という考えを持っていたことに気付き、そこを修正していく方向に舵を切ります。

 

  

田淵「(『CIDER ROAD』に鍵盤やホーンの音がたくさん入っていると言う指摘に対して)ああいった音って自分が作ってる音楽に必要なものとして以前からずっと存在してはいたのですが、僕の頭の中だけで鳴ってたんです。今まではそれを鳴らさなくても、リスナーにイメージは伝わるかなって思ってたんですよね。だけど「伝わらないんだな」って気付いたというか。それで3rdアルバムのあたりで入れてみたんです。

 

田淵「多分ですけど、自分が「何が好きか」を1stと2ndではあまり言ってなかっただけなんです。好きな部分をアピールするやり方がわかってなかったというか。嫌いな側面を歌ってれば「実際はこういうのが好きなんです」っていう点をわざわざ口に出して言わなくても、汲み取ってもらえる気がしてたんでしょうね。」

<音楽ナタリーのインタビューより引用>

natalie.mu

 

 

 

それまでは田淵の頭の中だけに存在し、楽曲中には明示されてこなかった言葉や音たちが、ロックバンドの提示するポップスとして、半信半疑ながらも世に放たれます。それが『オリオンをなぞる』であり『Populus Populus』であるのだと思います。『Populus Populus』のリリースによって、彼らはそのスタンスに対して「これでいいんだ!」という確信を得ます。そして、確信を持ってそのスタンスを極限まで突き詰め「UNISON SQUARE GARDENとはこういうバンドです!」ということを世に強く宣言したアルバムが『CIDER ROAD』なのです。 つまり、彼らが自らのアイデンティティを掴み取り、それを世に示したアルバムが『CIDER ROAD』だということです。 

 

「名前」という歌詞と『CIDER ROAD』について

上でつらつらと書いてきたように、「名前」はアイデンティティの象徴であり、『CIDER ROAD』は彼らのアイデンティティが世に示されたアルバムです。となると、このアルバムに「名前」という言葉が多用されている理由もぼんやりと想像できてくるのではないでしょうか。闇期の中で迷走し、自分たちが何をやりたいのか、どこなら勝てるのかを見失っていた彼らにとって、このアルバムを作りあげていくことは、自らの奏でる音楽に対して、ひとつひとつ名前を付けていく作業だったのだと思います。これが、『CIDER ROAD』において「名前」という歌詞が多用されていることに対する僕の解釈です。

 

 

【僕に 例えば君は 名前 例えば聞くかもな 名前なんかないよ何にも だから君が今付けたらいいんだよ】

<お人好しカメレオン>

 

 

ここまでばっちりと自分たちのアイデンティティを示したアルバムの最重要曲に、「それでも名前は君が付けるのだ」と言い放ってしまう彼ら、どこまでもひねくれてますよね(笑)しかしそう思う反面、そんな風にリスナーがひねり出した解釈を全力で肯定してくれるところが本当に大好きで仕方無い、そんなことを改めて思いました。

 

ぶろぐを、始めます

こんばんは、だてと申します。

音楽とラーメンとビールが好きなアラサー初心者です。

 

突然ですが、ぶろぐを始めてみようと思います。

理由は色々とあるんですが、大きな理由は下の3つです。

 

好きなもの魅力を他人に伝えられるようになるため

「何かを続ける」という感覚を思い出すため

アウトプットする趣味が欲しかったため

 

①はここ数年切実に感じていることです。冒頭で書いたとおり、僕は音楽やライブが大好きなのですが、友人や家族に「どこが好きなの?」と聞かれたときに「とにかくヤバい」みたいな言葉しか出てこなかったり、頑張って伝えようとしても誰でも言える様な使い古された言葉しか出てこなかったりという状況です。そんな状況を打破したいな、どうしようかなと思ったときに、「頭の中でまとめてとにかく書いてみる」という方法が一番早いのかなという結論に至ったわけです。ぶろぐを始めてみようと思った1番大きなきっかけがこれです。

 

②はここ5年くらいの僕の人生における課題です。というのも、僕は元々飽き性で物事を続けることが苦手なんです。それこそ、何かを続けることがほぼ強制されていた高校生までの間は、「何かを続けて結果を残す」というサイクルが癖としてそれなりについていたんですが、高校を卒業すると別に何かを続けなくても誰からも怒られないし不自由もしないんですよね。そんなこんなでここ5年くらい何かを続けた結果「僕はこれが出来ます」っていう経験が無い、これが相当なコンプレックスなんです。それを乗り越えるためにも、まずは続けやすそうなものからということで、どちらかというと苦手ではない「文章を書く」ことからやってみようかなと思いました。

 

③は②と同じようなことなんですが、僕、今現在の趣味が「音楽を聴く」「ラーメンを食べる」「ビールを飲む」と受身なものしか無い状態です。そのせいかどうかは分からないんですが、頭を使うことがどんどん苦手になっている気がしてとても危機感を覚えています。アウトプットすることって、僕の感覚的にはインプットすることの何十倍も難しい気がしていて、ブログを書いてアウトプットすることを続ければ頭を使う訓練に少しはなるのかなと思ったんです。これが最後、3つ目の理由。

 

そんなこんなで上の理由でこれからぶろぐを始めます。あんまり根詰めて一生懸命やるとそれこそまたすぐやめてしまいそうなので、不定期で気が向いたときに書くゆるい感じでやろうかなと。上にも書いたとおり、好きなものの魅力を伝えられるようになるのが1番大きな目的なので、記事の内容は音楽関連、特にUNISON SQUARE GARDENの話が中心になるかなと思います、大好きなので(笑)。自分が書いた文章を公開するのって何だか恥ずかしくてくすぐったいのですが、頑張って書くので気が向いたら読んでみてくださいね。あ、ちなみにURLのpanyanyan(ぱにゃにゃん)はラオス語で「頑張る」っていう意味です。ぶろぐ、ぱにゃにゃん。

 

そういえば、文章書く練習にと思って某音楽文に投稿したんですが、どうやらボツになったみたいなので気が向いたらそのうちしれっとここに載せるかもしれないです。

 

ではでは、よろしくお願いします。